並木博美先輩を偲ぶ:稲 竹彦(高30回)

 東高の3年間、吹奏楽部に所属したことは、私にとってとても得難い経験でした。東高に入学すると、噂には聞いていた校歌・応援歌の練習、地区会など、衝撃の日々の連続の中で、吹奏楽部の練習も大変だったものの、何か心の落ち着く時間、居場所でもありました。それは、吹奏楽部も先輩後輩の関係はそれなりに厳しかったにもかかわらず、影響力があり、尊敬でき、吸収することの多い先輩が多かったからだと思います。その先輩のひとり、2023年3月に病気で突然鬼籍に入られた並木博美先輩を偲びつつ、沼津東高校時代を振り返ってみました。
 その頃の吹奏楽部は8月に定期演奏会があり、演奏会の最後にOB合同演奏があったため、特に夏休みになると卒業された先輩方も数多く練習や指導に来られていました。高校24回卒(昭和46年度卒)の並木博美先輩もその中のおひとりでした。並木先輩はプロのホルン奏者として長年東京佼成ウィンドオーケストラで活躍され、多忙だったにもかかわらず毎年欠かさず指導に来られていました。怖い先輩も多い中で、ユーモアを交え、穏やかでありながらとてもユニークな指導をして下さり、自称「ヒゲのオジサン」として皆に慕われていました。
 高校を卒業して7年目の1984年、私が吹奏楽部OB会幹事を務めた時に、定期演奏会20周年記念誌「鉄笛」(てってき)を発行することになり、その際に並木先輩からも寄稿をいただきました。音楽と芸術についての想いが書かれており、中でも「瞬間芸術である音楽は、忍耐強い綿密な練習を数多くこなして生まれるものであり、しかもその試練を数多く乗り越える程、より高度な演奏が行われていくのである。」という一文が印象に残っています。これは音楽だけでなく、様々な分野でも共通して通ずる深い考え方ではないかと今更ながら納得しています。
 ところで、吹奏楽部については、ソニーの社長・会長を務められた「大賀典雄氏がブラスバンド部をつくった」という記載が、月刊経営塾 1995年2月号「高校OB人脈総点検 第10回 ~沼津東高校の巻~」(P121~P126)という記事の中にあります。東高としては昭和35年に自治会直轄で吹奏楽部が設立されたとなっていますが、旧制沼津中学校時代にそのルーツがあることをこの記事で知りました。この記事は、東京香陵同窓会会長を務められた鈴木英夫氏(当時兼松相談役)をはじめとする当時各界のトップとして活躍されていた旧制沼津中学・東高OBの方々のインタビューで構成されており、錚々たる先輩方の紹介やエピソードが載っています。記事の締めくくりがとても印象深く、「性格が温厚で権謀術数ができない。したがって相手を蹴落とすことはせず、あくまで自らの個性で伸びていくのが、沼津東高校出身者の基本である。」となっており、並木先輩もまさにそのような方だったと思い、そのような先輩方を輩出してきた沼津東高校、そして吹奏楽部をあらためて誇りに思った次第です。
 並木先輩は、時々テレビ番組にも出演されており、「題名のない音楽会」などでもお見掛けしたことがありました。今ではYouTubeが便利に利用できるようになっていますが、ある時、そのYouTubeで並木先輩が所属されていた東京佼成ウィンドオーケストラの演奏をいくつか見つけました。中でも東高時代に演奏したことのあった「クラウン・インペリアル」はとても気に入っています。(Walton – Crown Imperial [Fennell, TKWO]で検索)2000年の演奏で、1984年から東京佼成ウィンドオーケストラの常任指揮者を務めた世界的マエストロ、フレデリック・フェネル氏が指揮をしています。圧巻の名演であることは言うまでもありませんが、「カッコいい」並木先輩の演奏する姿が見られるので、何度も視聴してきました。懐かしく、聴くと不思議と活力の湧く「クラウン・インペリアル」を視聴しながら、並木先輩のご冥福をお祈り致します。「合掌」

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