宇宙への道:内山 隆(高18回)

(本文は、1988年6月の総会時に発行された『東京香陵同窓会20周年記念会報』に掲載の内山隆氏の文章を転載させていただきました。)

「宇宙への道」と題して、

現在、小生は宇宙利用関連の研究開発の仕事をしております。これまでの宇宙開発は、その“高さ”を利用することを中心に進めて来ました。例えば、放送衛生・通信衛星・気象観測衛星などがこれに相当します。しかし、今後は、宇宙としての特有の環境を利用することが大変注目されています。

即ち、無重力環境を利用した新合金、高純度の半導体材料や薬品の開発や、太陽光発電などが代表的な例です。これらの実験の場を提供することを目的に、米国を中心としてカナダ・日本・EC(EUの前身)が協力して、1995年頃の運用を目指した恒久的な宇宙基地の計画が進められており、1987年度より本格的な設計作業に着手する予定となっています。また、これに先立って、1992年頃に日本のロケットで打ち上げて三週間から三ヶ月の間、各種の生物実験・材料実験・たんぱく質合成実験などを行い、米国のスペースシャトルで回収することも計画されています。

この実験に関連して、小生の研究部では、“もやし”と“めだか”と“いもり”を飼育する準備をしています。なにか、子供のいたずらのように思われるかも知れませんが、実はこれは大真面目な科学的実験なのです。“もやし”については、根の先にあると言われている重力検知細胞の実験、“めだか”については、卵に水をかけるとふ化するアフリカの特殊なめだかを使った生体発生の実験、“いもり”についても、無重力下における細胞の発生異常に関する実験なのです。

さらに、今後の宇宙開発においては、ロボット化が大きなテーマとなっています。これは、前述の宇宙基地の組立に利用するばかりでなく、人工衛星の保守・点検・燃料補給、さらには、宇宙のゴミ掃除まで、多くの利用が考えられています。米国のNASAでは、宇宙基地開発予算の10%がこの宇宙ロボットや自動化の研究に注ぎ込まれています。

小生の所でも、この宇宙を自由に飛びまわる宇宙ロボットの研究開発を進めています。また、この宇宙ロボットを使った月基地や火星基地の建設の提案もなされています。何か、小学生の時に読んだSF小説を思い出すような話ですが、国際学会で真面目に議論されています。

宇宙開発の計画については、「桃・栗 三年、柿 八年、宇宙 十五年」と言うそうです。 コロンブスらが十五世紀の大航海時代に活躍したように、やがて宇宙においても宇宙大航海時代がやってくるのかも知れません。

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